「魔王」について紹介します。
「魔王」は、ドイツ語による歌曲、つまりリートです。作曲したシューベルトは、このリートの作曲の名手でした。彼は、600曲を越えるリートを作曲したといわれています。
この曲はバリトンの音域の歌手ひとりで歌います。こういった一人で歌う曲を独唱曲といいます。
「魔王」の場合には、ひとりで4役をこなすことになります。「語り手」、「父」、「子」、そして「魔王」です。
それぞれの登場人物の心情を踏まえて声色や調子を変えて歌います。「子」のおびえる様子、「魔王」のたくみに誘いかける感じなどは聞きごたえがあります。
語り手は、心情をあまりこめずに、たんたんと物語の状況を説明する歌い方です。ピアノは歌手に伴奏します。
印象的なのは、冒頭の部分の三連符の連続です。これはピアノで馬が急いで駆け抜ける様子を描いたものです。それに続く小節は嵐の風の様子も表します。
この導入部分の伴奏は、聞き手を引き込み、これから展開する物語の緊張感を高める効果があります。