魔王1

「魔王」について紹介します。

「魔王」は、ドイツ語による歌曲、つまりリートです。作曲したシューベルトは、このリートの作曲の名手でした。彼は、600曲を越えるリートを作曲したといわれています。

この曲はバリトンの音域の歌手ひとりで歌います。こういった一人で歌う曲を独唱曲といいます。

「魔王」の場合には、ひとりで4役をこなすことになります。「語り手」、「父」、「子」、そして「魔王」です。

それぞれの登場人物の心情を踏まえて声色や調子を変えて歌います。「子」のおびえる様子、「魔王」のたくみに誘いかける感じなどは聞きごたえがあります。

語り手は、心情をあまりこめずに、たんたんと物語の状況を説明する歌い方です。ピアノは歌手に伴奏します。

印象的なのは、冒頭の部分の三連符の連続です。これはピアノで馬が急いで駆け抜ける様子を描いたものです。それに続く小節は嵐の風の様子も表します。

この導入部分の伴奏は、聞き手を引き込み、これから展開する物語の緊張感を高める効果があります。

浜辺の歌

「浜辺の歌」はゆったりした浜の様子を歌った曲です。昔のおだやかな海の様子を思い出してつくった情緒豊かな曲です。

この曲の作詞は、林古渓(こけい)です。東京音楽学校(東京芸大)の講師で、文学者でもあります。そして作曲は成田為三(ためぞう)です。秋田の出身で、ほかにも「カナリヤ」などの童謡の作曲があります。

この曲はヘ長調の曲です。主音はへ音となる長音階の曲です。したがってこのヘ音のところが階名のドにあたります。五線譜にはフラット(♭)がひとつつきます。♭の位置は、五線譜の第3線に丸い部分がかかります。

長調の曲は、よく曲の終わりがドの音で終わることが多いです。この曲もそうです。短調の曲の場合にはラで終わることが多いです。

「浜辺の歌」は、8分の6拍子です。したがって1小節あたり8分音符(♪)が6拍あることになります。「強、弱、弱、(強)、弱、弱」(2つのめの(強)は少しだけ弱く)としていきます。

この6拍子分は前の3拍と後ろの3拍にくくって、2拍子とみることもできます。このようにくくれる場合を複合拍子といい、1小節が必ず2等分できます。

「浜辺の歌」は、♪=104~122の速さで演奏されます。曲の最初には「優美に」と指示書きがあります。それからこの曲は1拍めが弱拍からはじまる弱起の曲です。最初の部分は四分休符、八分休符、四分休符、そして6拍めではじまります。

この曲に使われているスラーとタイについて説明します。スラーは同じ高さの音符をつないで演奏するときに使います。それに対してスラーは違う音の高さを持つ音符をなめらかに演奏するときに使います。

この曲を歌うときには、音が切れないように、一つ一つの音をなめらかに歌うレガートで演奏します。

この曲は二部形式の曲です。したがってA,B2つの大楽節からなります。大楽節1つは2つの小楽節(aとa’あるいはbとb’)からなります。したがってこの曲の形式はA(aa’)B(bb’)と書き表すことができます。

詞のなかにある古い日本語について解説します。「ゆうべ」とは夕暮れ時、つまり夕方をさします。「あした」とは夜明け時、つまり朝の明ける頃をさします。「もとおれば」とはめぐれば、さまよい歩けばという意味です。「しのばるる」とは思い起こされる、思い出すという意味です。